2009年8月17日月曜日

肺,気道の病気 『症 状 Ⅲ』

呼吸困難の種類


肺に病気のある患者の多くは、体を激しく動かしたときに呼吸困難を経験します。


運動中、体はより多くの二酸化炭素を出し、酸素をよりたくさん使います。

脳の呼吸中枢は、血液中の酸素濃度が低下したり、二酸化炭素濃度が上昇した場合に呼吸を速めます。

心臓や肺が普通に機能していないと、少しの運動をしただけで呼吸数が急激に増え、呼吸困難を来すことがあります。肺の病気が悪化すると、安静時でも呼吸困難が起こります。


閉塞性または拘束性の肺疾患によって呼吸困難は起こります。

特発性肺線維症(浸潤性肺疾患: 特発性肺線維症を参照)などの拘束性の肺疾患では、肺が硬くなり、息を吸う際に十分に広がらなくなります。

重度の背骨の弯曲(脊柱側弯[そくわん]症)は、肋骨の動きを低下させ、拘束性の変化を引き起こします。

拘束性肺疾患では、肺の壁が厚くなって呼吸数が増加し、体への負担が増加するため、呼吸困難が起こります。

慢性気管支炎、肺気腫、喘息などの閉塞性肺疾患では、気道が普通よりも狭くなり、空気が流れにくくなります。

息を吸うときには気道が広がるため、空気が中へと取りこまれますが、息を吐くときは気道が狭くなるため、空気は吸いこんだときと同じ速さでは肺から吐き出されず、呼吸は苦しくなります。


肺機能検査(肺と気道の病気の症状と診断: 肺機能検査を参照)は、肺の閉塞や拘束の程度を調べる検査です。呼吸器系の障害には、閉塞性の障害と、拘束性の障害があります。


心臓は肺へと血液を押し出すので、肺が正常に機能するためにも心臓はきちんと機能していなければなりません。

心臓の働きが低下すると、肺の中に液体がたまり、肺水腫という病気になります。

肺水腫は呼吸困難を引き起こし、胸に息苦しさや重苦しさを感じます。

肺に液体がたまると、気道が狭くなったり、喘鳴も聞かれます。この状態は、心臓喘息と呼ばれます。

起座呼吸とは、横になると呼吸困難を起こし、起き上がると楽になることです。

心臓の働きが低下していると、起座呼吸をすることがあります。

発作性夜間呼吸困難は、就寝中に突然起こる息切れの発作で、恐怖を覚えます。

息が止まって目が覚め、座るか立ち上がるかしなければ息ができません。

これは起座呼吸の中でも極端なものですが、重症心不全の徴候です。

貧血や出血を来した人でも、酸素を組織へ運ぶ赤血球数が減少するために呼吸困難を起こします。

患者は血液中の酸素濃度を高めようと、反射的に速く深く呼吸します。

重症の腎不全でも息切れを感じ、代謝性アシドーシスや心不全、貧血が起こるため、浅く速い呼吸が始まります。

過換気症候群では、十分な空気を吸いこめないように感じるため、呼吸が激しく速くなります。

この状態は主に、身体的な問題ではなく、不安が原因で起こります。過換気症候群になった人の多くは、これが心臓発作だと思い、恐怖を覚えます。

過呼吸によって、血液中の二酸化炭素濃度が低下し、特有の症状が起こります。自分の周りで起こっていることがらが遠くで起こっていると感じられるような、意識の変化が起こります。

また、手足や口の回りが、しびれた感じがすることがあります。



胸痛は、胸膜という肺を包んでいる2層の薄い膜、肺、胸壁から生じます。

また、呼吸器系ではなく、心臓などの病気によって胸痛が起こることがあります。

この場合の胸痛は、肺の病気ではありません。

胸膜痛は、胸膜の炎症(胸膜炎)から起こる鋭い痛みで、深呼吸やせきをすると、痛みがひどくなります。

胸の痛む場所を押さえ、深呼吸やせきをしないようにするなど、胸壁を動かさないようにすると痛みは和らぎます。

たいてい、痛む部分は特定できますが、時間とともに痛む場所が移動することがあります。肺の底部に起こった胸膜炎では、炎症を起こしている側の肩に痛みを感じます。

胸水は、2層の胸膜の間に滲出液がたまるもので、初めに胸膜痛が起こりますが、液体がたまって2層の膜が離れるのに伴い、痛みが治まることがよくあります。

胸膜痛を起こす原因は、ウイルスや細菌への感染、癌、血流に乗って肺へ到達し肺動脈にとどまった血のかたまりなど、さまざまです。

肺膿瘍や肺腫瘍など、他の肺疾患によって起こる痛みは、胸膜痛より説明しにくいとされています。

この痛みはよく、漠然とした胸の奥の痛み、と表現されます。

肺や気道の損傷によるものの大部分は、このような痛みを起こします。

胸壁そのものから痛みが生じる場合もあります。

痛みは深呼吸やせきで悪化し、胸壁の一部だけが痛み、その部分を押しても痛みを感じます。

この痛みの原因として最も多いのは、肋骨の骨折や肋骨と肋骨の間の筋肉(肋間筋)の断裂や損傷など、胸壁の損傷です。

肋間筋はひどくせきこむだけで損傷することがあり、痛みは数日から数週間続きます。

胸壁内部に腫瘍ができると、ごく一部が痛みますが、腫瘍が肋間神経の中にまで広がると、その神経が支配する領域全体に痛みが生じます。

水痘帯状疱疹ウイルスによる帯状疱疹では、発疹が出る徴候として、呼吸の合い間に胸が痛むことがあります。



    続く>>>肺,気道の病気 『症 状 Ⅳ』