2012年7月22日日曜日

心の健康!『人格障害』 Ⅴ

人格障害 診断


人格障害は既往歴、


特に繰り返し現れる不適応的な思考や行動のパターンに基づいて診断されます。


人格障害がある人は、


行動の結果が思わしくない場合にもそのパターンを頑固に変えようとしないため、


他者の目にも明らかになりがちです。


また、心理的な対処のメカニズム(防衛機制)の不適切な使い方もよく目につきます。


この対処メカニズムはだれもが無意識に用いるものですが、


人格障害がある人の場合はその使い方が未熟で不適応的であるために、


日常生活にまで支障を来します。


人格障害 治療


個人の人格特性が形成されるまでには長い年月がかかるように、


適応の妨げとなる特性を治療するにもかなりの年月が必要です。


人格障害を短期間で治す治療法はありませんが、比較的早く現れる変化もあります。


たとえば、薬物療法や環境ストレスの低減により、


不安や抑うつなどの症状はすぐに軽快します。


行動の変化は1年以内に生じますが、対人関係の変化には時間がかかります。


依存性人格の人ではたとえば、


「決められない」という言葉を口にしないようにすることは行動の変化であり、


意思決定の責任を買って出たり、


少なくともある程度は受け入れるという形で職場の人や家族とかかわるようになることが対人関係の変化ということになります。


治療法は人格障害のタイプにより異なりますが、


すべての治療に共通する原則がいくつかあります。


人格障害の人は自分の行動に問題があるとは思っていないため、


状況に適応していない思考や行動が引き起こす有害な結果に本人を直面させる必要があります。


それにはまず、本人の思考や行動パターンから生じる望ましくない結果を、


心理療法士が繰り返し指摘する必要があります。


ときには行動に制限を加えることも必要となります(たとえば、怒って声を張り上げるのを禁じ、


普通の声で話させる)。


家族の行動は、本人の問題行動や思考に良くも悪くも影響するため、


家族の関与は治療に役立ち、多くの場合不可欠でもあります。


グループ療法や家族療法、専用施設での共同生活、


治療を兼ねた社交サークルや自助グループなどが、


社会的に望ましくない行動を変えていく上で役立ちます。


大半の治療の基本となるのは心理療法(対話療法)で、


不適応行動や対人関係のパターンに何らかの変化がみられるまでには、


通常は1年以上は続けなければなりません。


医師と患者の間に親密で協力的な信頼関係ができると、


患者はそこから自分の悩みの根源を理解し、


不適応行動を認識できるようになっていきます。


心理療法は、依存、不信、ごう慢、


人につけこむといった対人問題の原因となる態度や行動を、


本人がより明確に認識するのに役立ちます。


人格障害の中でも、特に適応の妨げとなる態度や期待、


信念などがある場合(自己愛性人格、強迫性人格など)


には精神分析を受けることが勧められ、通常は少なくとも3年間続けます。


行動療法は、落ち着きのなさ、社会的孤立、自己主張の欠如、


かんしゃくなどの行動を変えるのに役立ちます。


境界性人格、反社会性人格、回避性人格の場合は行動の変化が最も重要です。


ただし、反社会性または妄想性人格の場合は、


どの治療法でも成功することはまれです。


うつ病、恐怖症、またはパニック障害がある人格障害には、


薬物療法が適切な治療法となる場合があります。


ただし、薬には症状を緩和させるだけの限られた効果しかありません。


一方、人格障害から起こる不安や悲しみなどの感情は、


薬で十分に軽減されることはまずありません。


境界性人格の人に薬物療法を行うと、薬の使用方法を誤ったり、


自殺を図るといった問題が生じやすいため注意が必要です。