2011年11月2日水曜日

運動障害!「パーキンソン病」 ⑥

アマンタジンはインフルエンザの治療薬として使われることがある薬で、軽度のパーキンソン病に単独で使用されたり、レボドパの補助薬として使用されます。


ベータ遮断薬のプロプラノロールは、振戦を軽減するために処方されます。





手術: 淡蒼球切断術(たんそうきゅうせつだんじゅつ)では、大脳基底核の小さな領域の1つを外科的に破壊します。


この手術によって、オンオフ現象のうちの運動開始が困難なオフ状態と、レボドパ治療の数年後に起こる不随意運動が大幅に軽減されます。


手術の代わりに、同じ領域に小さな電極を埋めこむこともあります。高周波の電気刺激を加えることによって、同様の改善効果が得られます。


ヒトの胎児の組織からドパミンを産生する神経細胞を採取して、パーキンソン病の人の脳に移植する手術があります。


移植された細胞は他の神経細胞と結合して、ドパミンを産生するようになります。これにより失われていた神経伝達物質が補充されます。


しかし、この手術はまだ試験的段階にあり、さらに研究する必要があります。





介護者と終末期の問題: パーキンソン病は進行性のため、患者は最終的には食事、入浴、着替え、トイレなど、日常生活に介護が必要な状態になります。


介護する人はパーキンソン病の身体的・精神的な問題と、可能な限り患者の身体機能を維持させる方法を習っておくと役に立ちます。


介護は疲労とストレスに満ちているため、支援団体の援助を受けるとよいでしょう。


最終的にパーキンソン病の人は重度の身体障害状態になって動けなくなります。


介助されても食事ができなくなるでしょう。患者の約半数に痴呆が現れます。


ものを飲みこむのが次第に困難になっていくため、誤嚥性肺炎による死亡リスクが高くなります。


さまざまな理由から、特別養護老人ホームなどが最適な療養場所として選択されることもあります。


この病気の人は判断能力が失われる前に、自分が死を迎えるときにはどのような医療を望むかを事前指示書(アドバンス・ディレクティブ)にまとめておくとよいでしょう。






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運動障害!「パーキンソン病」 ⑤

一部の副作用は患者に耐えられる用量を制限するため、各人に応じたレボドパの最適用量は、薬の効果と副作用のバランスを考えて決められます。


副作用には、口、顔、腕、脚の不随意運動、悪夢、幻覚、血圧の変化などがあります。


多くの専門医が、治療開始から数年間の初期にドパミンに似た作用のある薬(ドパミン作動薬)をレボドパと併用または代用すると、不随意運動の発症を遅らすことができると考えています。


レボドパの服用を5年以上続けると、薬がよく効いている期間とまったく効いていない期間が急速に入れ替わる、オンオフ現象と呼ばれる効果が半数以上の人に現れます。


オンオフ現象では、数秒の間に、かなり動くことができる状態から重い障害状態へ急激に変化します。


レボドパを服用するたびに症状の軽快期間が短くなり、動けない期間と動ける期間が交互に現れます。


しかし、運動機能が良い状態のときでも、レボドパの服用による不随意運動(体がもがいたり、異常に活発に動く)がかなり増加します。


初期のころは、低用量の薬を頻回に服用すればこれらの効果は抑制できますが、15~20年後には副作用は抑え切れなくなります。その時点で手術が検討されます。


他の薬は、どれもレボドパほどの効果はありませんが、レボドパに耐えられない患者や効果が不十分な患者には、使う価値があります。


ドパミン作動薬(プラミペキソールやロピニロールなど)はドパミンに似た作用をもつ薬で、病気のどの段階でも有用です。


セレギリンはモノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害薬と呼ばれる抗うつ薬の1種で、ドパミンの分解を妨げてドパミンの作用を延長させる効果があります。


トルカポンとエンタカポンにもドパミンの分解を妨げる効果があり、レボドパの補助薬として有効なようです。


抗コリン作用薬のベンズトロピンやトリヘキシフェニジルなどは、振戦を軽減する効果があり、パーキンソン病の初期に使用されます。


また、病気の後期にはレボドパの補助薬として使用されます。


抗コリン作用薬にはアセチルコリンの作用を遮断して振戦を抑制する作用があります。


振戦はアセチルコリンの過多とドパミンの過少というアンバランスによって起こると考えられています。


抗ヒスタミン薬や三環系抗うつ薬など、抗コリン作用があるその他の薬は、効果が弱いためレボドパの補助薬として使用されます。

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運動障害!「パーキンソン病」 ④

パーキンソン病 治療

治療に用いる物理的手段はパーキンソン病もパーキンソン症候群も同じですが、パーキンソン病の治療に使う薬はしばしばパーキンソン症候群には効きません。


むしろ基礎疾患を治療したり、パーキンソン症候群の原因となる薬の使用を中止する方が、治癒のために有効なことがあります。





身体的手段: 日常活動をできる限り多く行い、規則正しい運動プログラムにしたがって運動を続けることにより運動機能の維持を図ります。


理学療法と作業療法は、筋肉の緊張の維持または回復、関節の可動域の維持、身体機能の適応方法の習得に役立ちます。


歩行器などの補助器具も自立を維持するために役立ちます。


食物繊維の豊富な食事は、レボドパの使用で悪化しやすい便秘の改善に役立ちます。


プルーンジュースのような食品や、センナなどの便を軟らかくする作用のある緩下薬は、規則的な排便を促す効果があります。


嚥下困難は栄養失調の原因となるため、食事の栄養価に注意しなければなりません。


鼻から深く吸いこむ訓練を行うと嗅覚の回復と食欲増進に役立ちます。


パーキンソン病の人が安全に暮らせるように、家庭の周囲に簡単に手を加えるとよいでしょう。


たとえば、小さな敷物はつまずくといけないので取り外し、浴室、廊下などに手すりをつけて転倒を防ぎます。


日常の動作はなるべく簡単に行える方法を工夫します。


たとえば服にはボタンの代わりにマジックテープをつけたり、ファスナーつきの靴に替えたりします。





薬: どんな薬を使ってもパーキンソン病を治癒したり進行を止めることはできませんが、体の動きを改善し機能を何年間も維持するのに役立つ薬はたくさんあります。


薬は2種類以上使用する必要があります。


レボドパは振戦や筋肉の硬直を抑え、運動能力を改善するのに最も効果がある薬です。


レボドパの治療はパーキンソン病の症状を劇的に改善しますが、別の病気を原因とするパーキンソン症候群には効果がありません。


内服したレボドパは大脳基底核でドパミンに変換されて、ドパミン生産量の低下を補います。


軽度のパーキンソン病では、レボドパの服用によって運動能力がほぼ正常レベルにまで回復したり、寝たきりだった人が再び歩けるようになったりしています。


レボドパはカルビドパと一緒に服用します。


カルビドパはレボドパが脳に達する前にドパミンに変換されるのを防ぎます。


2つの薬の併用により、レボドパの用量を減らせるため、吐き気や顔面潮紅などの副作用も少なくなります。


レボドパとカルビドパの併用はパーキンソン病治療の主流になっています。


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