せん妄とは、突然起こり良くなったり悪くなったり変動し、見当識障害、注意力と思考力の低下、意識レベルの変化を伴う認識障害です。
せん妄は病気ではなく、異常な精神状態を指します。
この言葉には医学用語としての定義があるにもかかわらず、しばしばさまざまな混乱状態を表すのに使われています。
せん妄は一時的な状態であるため、患者数を決めることは困難です。
せん妄は何らかの新しい病気が起こった徴候であることが多く、70歳以上の入院患者の約3割に起こっています。
原因
ほとんどどんな病気でも悪化すると、せん妄は起こりえます。
病状が重いときや、脳の機能に影響する薬を服用するとだれでも混乱しがちになります。
また高齢者や、脳卒中、痴呆、神経に変性を起こす病気にかかっていると、重症でなくてもせん妄は起こります。
これらの患者では、尿閉や便秘、眼鏡や補聴器を外しているときに感じる周囲からの孤立感(感覚遮断)、長く続く不眠(睡眠遮断)、といった軽い病状がきっかけで、せん妄が起こります。
たとえば、感覚遮断と睡眠遮断は集中治療室(ICU)で多くみられ、せん妄を起こすことがあります。
この障害はICU精神病と呼ばれることがあります。
入院も、せん妄を引き起こすきっかけとなります。高齢者の約10~20%は、入院中にせん妄を起こしています。
また、手術後にもせん妄が起こりやすく、おそらく手術によるストレス、手術中の麻酔薬の使用、手術後の鎮痛薬の使用などが理由と考えられています。
可逆的なせん妄の最も一般的な原因に薬があります。
使用している薬の影響や、長期間使用していた薬の中止による離脱症状(禁断症状)によって、せん妄が起こります。
若い人では、消毒用アルコールや不凍液など毒物を飲んだり、違法薬物の使用、急性アルコール中毒などがせん妄を起こす原因です。高齢者では、通常は処方薬がせん妄の原因です。
モルヒネやメペリジンを含むオピオイド、ベンゾジアゼピン系を含む鎮静薬、抗精神病薬、抗うつ薬など精神活性のある薬は、神経細胞に直接作用して脳の機能を損ない、せん妄を起こすことがあります。
市販されている抗ヒスタミン薬など、抗コリン作用のある薬は、せん妄の原因になります。
興奮薬のアンフェタミンもせん妄を起こすおそれがあります。
ベンゾジアゼピン系やバルビツール酸系など、長期に服用していた鎮痛薬を急に止めると、かなりの頻度でせん妄が起こります。
同様にアルコール依存者の禁酒やヘロイン中毒者の急なヘロインの使用中止も、せん妄を引き起こします。
血液中のカルシウム、ナトリウム、マグネシウムなどの電解質の濃度が異常値になると、神経細胞の代謝活動が妨げられて、せん妄が起こります。
電解質の異常は、利尿薬の使用、脱水、あるいは腎不全や癌(がん)の広範な進展で起こります。
また甲状腺の働きが衰える甲状腺機能低下の場合は、嗜眠(しみん)とともにせん妄が起こり、逆に働きが活発になりすぎる甲状腺機能亢進の場合は、やたらと体を動かす多動を伴うせん妄が起こります。
若い人のせん妄の原因は、通常は脳が直接侵される病気で、髄膜炎や脳炎のような脳の感染症がその例です。
一方、高齢者のせん妄は、薬や体の他の部分の病気でも起こります。
たとえば尿路感染症、肺炎、インフルエンザなど、脳に間接的な影響を及ぼす感染症です。
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2011年9月29日木曜日
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