骨折
けん引: 治療中、骨を正しい位置に保つためにけん引を行うことがあります。
ロープ、滑車、おもりなどを備えたけん引器具を使って腕や脚に持続的に引っぱる力を加えます。
成人の骨折の場合、けん引はギプス固定や手術が安全に行えるようになるまでの間の一時的な治療として行われます。
小児の骨折は成人よりも短期間で治るため、骨折のタイプによってはけん引が最適の治療法となる場合もあります。
また、けん引は成長板を損傷することはありませんが、手術では損傷が生じることがあります。
手術:
手術が必要になる骨折もあります。
たとえば開放骨折の場合は、骨折部位を切開して注意深く洗浄し、折れた骨の端の部分に異物による汚染がないことを確認しなければなりません。
骨片や腱が骨折面にはさまっていると、そのままでは骨のずれを整復できないことがあり、手術が必要となります。
粉砕骨折の場合は骨折部分がしばしば非常に不安定で、筋肉の収縮する力に対抗してギプスでは骨を正しい位置に固定することが難しく、骨が短くなったり、曲がってしまうことがあります。
関節骨折の場合、関節の接合面をほぼ完全に正しい位置関係に整復する必要があり、さもないと後になって関節炎が生じます。
病的骨折に対しては、骨が完全につぶれてしまう前にできるだけ固定手術を行います。
これによって疼痛や機能障害を防ぎ、転位骨折の手術といった、さらに複雑な手術を行わなくてすみます。
なお、大腿骨骨折(股関節骨折の大半を占める)では手術をしない場合には、患者が体重を支えられる程度に回復するまで何カ月もベッドで安静にしていなければなりません。
これに対し、固定手術を行えば数日後には、松葉づえ(体重支持に適したクラッチ型のつえ)や歩行器を使って歩けるようになります。
固定手術では、まず骨を元の形や長さに戻すために折れた骨を正確に整復します。
外科医は麻酔薬を使って筋肉を弛緩させ、X線画像で骨の位置関係を確認します。
続いて患部を露出させた上で、特別な器具を使って整復を行います。
さらに金属製のワイヤ、ピン、ボルト、棒、プレートなどを使い、骨片をしっかりと固定します。
金属プレートは骨の形に合わせ、骨の外側にねじで固定します。
金属棒は骨の一端から骨髄腔に挿入して使用します。
こうした骨折治療用のインプラントにはステンレス鋼、高強度合金、チタンが使用されます。
この15年ほどの間に作られたインプラントは、MRI検査装置に使用される強力な磁石に近づいても問題を起こしません。
また、ほとんどのインプラントは空港のセキュリティーチェック用装置を作動させることなく通過できます。
人工関節置換術(関節形成術)は、股関節または肩関節の外側の部分を構成する、大腿骨または上腕骨の上端部の損傷が大きい骨折に行います。
骨移植は、骨片と骨片の間が空きすぎている場合、治療後の治りが遅い場合(骨癒合遅延)や治らない場合(骨癒合不全)などに行われます。
合併症の治療: コンパートメント症候群の初期治療では、まずそえ木やギプスなど腕や脚を固定しているものをただちに外す、またはゆるめることから始めます。
筋肉のコンパートメントの内圧が上がり続ける場合には緊急手術(筋膜切開術)を行い、圧迫された組織を解放します。
この手術を行わないと、酸素不足から筋肉や神経が壊死する可能性があり、腕や脚の切断に至ることもあります。
肺塞栓症はヘパリン、低分子ヘパリン、ワルファリン、フォンダパリヌクス(ヘパリンに似た新しい薬)などの薬で予防することができます。
これらの薬は血液凝固を抑える作用があるため、肺塞栓症のリスクがある骨折患者に投与します。
肺塞栓症が発生した場合は緊急治療を行います。
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2011年7月3日日曜日
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