消化性潰瘍の合併症とは
ほとんどの潰瘍は合併症を起こすことなく治ります。
しかしときには、穿通、穿孔、出血、閉塞など命にかかわる合併症が起きます。
穿通
潰瘍は胃や十二指腸(小腸の最初の部分)の筋層を通過して、肝臓、膵臓などの隣接臓器に及ぶことがあります。
穿通すると、刺すような強い持続性の痛みが起こります。
痛みは実際の部位と異なる場所で感じられることもあります。
たとえば、十二指腸潰瘍が膵臓に達するとしばしば背部痛が起きます。姿勢を変えると痛みが強くなることもあります。
薬で治らない場合は外科手術が必要になります。
穿孔
十二指腸の前面や、まれに胃の前面にできた潰瘍が前壁を貫通して、腹腔内に通じる開口部が形成されることがあります。
その結果、急に強い痛みが生じ、その痛みが持続します。
痛みはさらに腹部全体に広がります。
片方の肩あるいは両肩にも痛みが生じ、深く呼吸すると痛みが激しくなります。
姿勢を変えると痛みが増すので、穿孔を起こした人は体を動かさないように横たわっていようとします。腹部に触れると圧痛があり、深く押してから急に戻すと圧痛が増します(これを反跳痛といいます)。
高齢者、ステロイド薬を服用している人、重い病気がある人では症状が幾分軽い傾向があります。
発熱は腹腔内感染症が起きていることを示しています。
穿孔は、放置しておくとショック状態を引き起こすことがあり、緊急の治療を要します。
ただちに外科手術と抗生物質の静脈内投与を行います。
出血
出血は潰瘍でよくみられる合併症で、痛みがなくても出血していることがあります。
鮮紅色の吐血や、血液が一部消化されてコーヒーかすのようになった赤褐色の吐血、黒色便、はっきりとわかる血便がある場合は、潰瘍から出血している可能性があります。
このような出血は消化管の別の場所からも起こりますが、診察では、胃と十二指腸に出血の原因がないかどうかをまず調べます。
出血が大量でなければ内視鏡検査を行います。
潰瘍からの出血が確認された場合は、内視鏡を使って出血部を焼灼(熱で破壊すること)して止血できます。
また、内視鏡で潰瘍の出血を凝固させる薬を注入する方法もあります。出血の原因が判明せず、出血量が少ない場合は、ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)やプロトンポンプ阻害薬などの潰瘍治療薬を服用します。
また、消化管を休息させるため、経口摂取をしばらくやめて点滴で栄養を補給します。
この治療法で治らない場合は、手術が必要になります。
閉塞
潰瘍周囲の組織が炎症を起こして腫れたり、以前にできた潰瘍が瘢痕化したりすると、胃の出口や十二指腸の内腔が狭くなることがあります。
このような閉塞が起こると、頻繁に嘔吐して、数時間前に食べた食物が大量に逆流します。
このほかの症状として、食後の異常な満腹感、腹部の膨張感、食欲不振などがみられます。
長期的には、嘔吐によって体重減少や、脱水、体内の電解質バランスの崩れが起こります。
普通は潰瘍を治療することにより閉塞も解消されますが、重度の閉塞がある場合は内視鏡による治療や手術が必要となります。
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